アクシデント

昨夜、出張帰りの某駅で、コンクリートの床にiphoneを落としてしまった。

カバンに入れておいたiphoneを取り出し、持ち替えようとした瞬間、奴が掌からするりとすりぬけて宙に飛びだした。
床まで1メートルほどの距離。飛び出した奴は5回転半ひねりの高難度の技を描きながら、足元前方40センチほどに着地。
しかし残念ながら、奴はその着地に失敗した。左下隅から床に叩きつけられるとそのまま倒れこみ優雅なカーブを描く背中で水平方向に数度回転、ゆるやかにその動きを止めた。
一瞬の静寂。

腰をかがめて、離れていった掌にやつを回収した。
薄暗い照明のもと、ためすがめつメディカルチェックをした。
どうもそれらしい傷は見当たらない。
おそるおそる奴の下腹部にある丸いボタンを押すと、画面表示は無事ではないか。
タップしてフリックしてピンチして、すべてOK。

なんて強い奴だ。

ついっちんぐしながらタクシーで帰宅した。

遅い時間の夕食をとる間に1日分のエネルギーを奴に補充しようと、奴の股間にコネクターケーブルを差し込もうとした。

ガーン。は、入らねぇ。

どうにかこうにか差し込み、充電が開始された。
しかしどうしてだ。
ケーブルを付けたまま、明るい照明の下、奴の体を再度チェックすることにした。

目の前が暗くなった。
奴はやはり傷ついていたのだ。
傷ついているにもかかわらず、健気なやつだ。
一層奴に愛着が湧いた。

傷は、左下隅打撲による裏カバー変形剥離。
早急に病院に入れ、医師の診断を仰がねばなるまい。