先週末、女房殿は2泊3日の旅に出た。
したがって私とお袋様はお留守番。
良い子にしていてね、と言って出掛けたかどうかそれはともかく、女房殿はきっぱりと旅立ちしたのだ。
これ幸いと留守を狙ってやりたい放題といきたいところだが、お袋様のお世話をするという重要な役目がある。
3度の食事と10時と3時のおやつ、それに毎食後のお薬と、なによりお袋様は年初から少々足を痛めているので寝る前にはそのお手当をしなければならない。
となると当初から悪だくみなんぞ出来るわけがない。
行ってらっしゃいと玄関先で三つ指ついてお見送りして後、三つ指ついてお迎えするまでの3日間、お袋様と二人きりの楽しく苦しい辛い日々だった。
お袋様、食事をして薬を飲んで椅子に座ったままウトウト。
しまいには首をがっくり前に垂れて眠り込んでしまう。
それはいいのだ、気持ちよく眠れれば。
目が覚めたその後が大変だ。
目が覚めると、こちらを向いてにこっ。
うたたねが照れくさいらしい。
続いてこちらに向いていた顔をゆうっくりと左右に水平移動。
何かを探しているようだ。
「あれー?」そら来た。
「あの人どうしたの?」
「誰?あの人って」
「ほら、ここで一緒に食事していたでしょ」
「え、ボクと母さんの2人しか居ないよ」
「嘘でしょう。だって居たでしょう」
「誰がいたの?」
「お母さん」
「お母さんて、おばあちゃんのこと?」
「うん」
「おばあちゃんは、ほら、あそこに居るでしょ」と仏壇の上の写真を指差す。
考え込んで「そうだよねぇ・・・・じゃ、ここに居たのは誰?」
お盆は過ぎたので故人はおそらくお墓に帰っているはずだし・・・
「誰だろうね」
「・・・・」
「今日はずうっと2人きりだなあ」
消え入るような声で「そうだよねぇ・・・・」
「夢見たんだよ、きっと」
「そうかなあ」と腑に落ちない様子。
「そうだよね、夢か」と徐々に落ち着いた。
居眠りが怖いのだ。
ウトウトして目が覚めると現実と一緒になって混乱してしまう。
こういうのが一日に4、5回続く。
結構イライラしてきますが、しようがありません。
で、一工夫した。
食事のあとの母をそれとなく観察。
ウトウトしそうないなったところで
「母さん、ベッドで休みなさい」と、
やや強制的にベッドへ連行。
横になってしまえば子守唄なんか歌わなくてもすうっと眠ってくれました。
安心安心と本なんぞ読んだりガラクタ引っ張り出したりの1時間。
起きてきました、お袋様。
「私、眠ったのね」
「そ、結構ぐっすり眠っていたよ」
どうやら大成功のようだ、混乱していない。
お目ざでも食べるかといただき物の桃を出すと、大ぶりの1個をぺろりと平らげました。
で、「さっき、私眠ってたよね」
「うん、寝てたよ」
「あれ、私はどこの家で寝せてもらってたの?」
「%&$#?¥!・・・」
うーん、失敗でしたw
女房殿は偉い。
お袋様とこんな会話を毎日しているのであります。
女房殿は素晴らしい!
早く帰ってきてくれ(泣)と祈った3日間でありました。
最終日、お袋様は玄関先の椅子で1時間も女房殿の帰宅を待っておりました。
女房殿が帰宅して涙を流して喜んだあと、お袋様は私に向かってこう言いました。
「私の息子はいつ帰ってくるの?」
私があなたの息子ですよ~~~~~~。